精子バンクで妊娠し子育て中の友人

こんにちは、スー子です!

今日は私のスウェーデン人の友人(仮名:アンナ)の少し珍しい妊娠、出産、子育ての話をしたいと思います。

アンナは現在44歳で、5歳の息子がいるシングルマザーです。

彼女は精子バンクで妊娠し、息子を授かりました。現在はスウェーデン国内でも可能となった精子バンクによる人工受精ですが、当時彼女が行ったのは近隣国であるデンマークでした。

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精子バンクとは?

精子バンクとは、簡単に言うと、一般の男性から提供された精子を適切に保管して、妊娠を望む女性に供給する機関です。

友人のアンナが利用した際は、精子バンクの機関が提携している病院に通い、そこで自分が選んだドナーの精子を人工授精してもらうという処置を受けました。

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アンナが利用したデンマークの精子バンクでは、約8割がデンマーク人の学生の精子で、彼ら(ドナー)は一回提供すると約400クローネ(約5,000円)の報酬を受け取ることができるそうです。

精子バンクを利用する女性は、オンライン上で希望ドナーの人種や民族、髪や目の色、身長・体重などの身体的な特徴や精子の運動能力の度合いを選ぶことができます

ドナー情報には、職業や学問の専攻分野なども記載されており、一部のドナーは自分の子どもの頃の写真を開示しているため、選定の際に確認することができます。

そして、そのドナーによって購入できる精子の値段は様々で、約50~2000ユーロ(約6,000~240,000円)と言われています。

精子バンクに関しては、ドナーの匿名性および子どもの知る権利に関して世界各国で議論がなされ、日本ではなかなか広まってはいないようです。

どうしても子どもが欲しい

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友人のアンナは、離婚歴があり子どもはいませんでした。

20代で離婚した後も、何人かの男性と付き合ってきましたが、結婚もしくは子どもを一緒に持ちたいと思える相手は見つからず、37歳の誕生日を迎えました。

旅行好きのアンナが子どもを欲しがっていることを私はあまり知らず、「きっといい人と巡り合ったら、同棲なり結婚なりして、子どもを持つのではないか」と漠然と想像していました。

スウェーデンでは事実婚が多く、事実婚のまま子どもを授かり育てるカップルが全体の半数以上です。

そして、高齢出産も一般的で、30代後半で初産という知り合いが私の周りでも珍しくありません。

2年程付き合った男性と、家族関係で折り合いがつかず別れたアンナは、37歳になった時、年齢のリミットを感じたようでした。

そして、40歳までに子どもを産むという目標を立てました。

精子バンクに行きつくまで

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始めは、子どもを一緒に育てていけるような信頼できるパートナーを探すことから始めました

周りの友人などに相談したり、紹介してもらったりしましたが、半年しても理想の相手には巡り合えませんでした。

それどころか、同年代の友人の友人の話で、恐ろしい結末を聞かされたといいます。

どうしても30代のうちに子どもが欲しいと思って、良い人そうな男性を見つけてすぐに事実婚を始め、子どもを作ったら、その男性は子どもが生まれてすぐに彼女への暴力が始まり、現在は離別調停中であるという話です。

この相手の男性は、子どもには手を出しておらず、スウェーデンの法律の基では離別後に子どもの親権の半分を持つことができてしまうため、この女性は今後ずっとこの男性と親権を分かち合って子どもを育てなければならなくなってしまうのです。

自分に暴力を振るう男性でも、子どもの父親であることに変わりはなく、完全に縁を切ることはできないという現実に苦しんでいるという話でした。

アンナはパートナー探しに希望を見いだせない中でこのような実話を聞いて、「焦ってパートナーを探してはいけない。私だけの子どもを持ちたい。」と思うようになりました。

そして、同時に少し考えていた、知人男性から精子を提供してもらうというアイデアも捨てることにしました。

それは、知人男性がいつ「自分が父親だ」「親権が欲しい」などと言い出すか分からないため、父親が存在しない子どもの方がいいと考えたからです。

そうはいっても、精子がなければ妊娠は不可能です。

そしてアンナが行きついたのは、デンマークでの精子バンクでした。

離婚や離別が一般的なスウェーデンでは、子連れ再婚や高齢者同士の再婚・事実婚がとても多いです。

そんな社会的背景もあってか、アンナは、「パートナーは後からでも、いくつになっても作れるけれど、子どもを産むには年齢を気にしなければならない。」と考え、真剣に精子バンクの利用を検討し始めたのでした。

精子バンクを利用して

Photo by Tim Gouw on Unsplash

アンナは精子バンクでの妊娠を目指し、まずは自分の体の状態のチェックから始めました。

病院にて自分が妊娠できる、またはしやすい体であるかの検査を行い、妊娠が見込めるという判定に安堵しました。

そして、当時はスウェーデン国内では認められていなかった精子バンクの人工授精の処置を行っているデンマークへ渡航し、精子バンクおよび医療機関にて数回の面談、身体チェックを起こったのです。

精子バンク利用者には、アンナと同じような考えのシングルマザーもいますが、一般的には、妊娠が難しい夫婦や事実婚カップルがほとんどで、どうしても子どもが欲しいという彼らは、精子バンクか養子縁組かという選択肢に迫れていることが多いです。

アンナの話では、精子バンクは数回のトライでも100万円程ですが、養子縁組は数百万から一千万円もかかるといいます。

また、シングルマザーやシングルファザーは、スウェーデンの法律で養子縁組は不可となっています。

アンナは、精子バンクの利用を決めるにあたり、同じように精子バンクで子どもを授かった先輩シングルマザーの話を聞いたり、精子バンクが紹介してくれたコミュニティにも参加しました。

「子どもにはいつ、どうやって説明するのか」

「後悔していないか」

「現在困ったことはあるか」など、

気になっていることをぶつけてみたといいます。

出会った先輩ママたちはそのほとんどが現状に満足しており、大きな問題も特にないようで、アンナもまたコミュニティの存在と今後も支え合っていける仲間ができたという安心感が生まれ、精子バンク利用へと背中を押されたといいます。

妊娠そして出産

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私がアンナから精子バンクでの妊娠計画を聞かされたのは、ちょうどデンマークへの初渡航の後でした。

子どもが欲しいから頑張って真剣にパートナーを探すと宣言してから一年弱だったと思います。

私にとってアンナは、何でも真剣に話し合えて、議論し合える関係の数少ない友人の一人なので、私の反応は正直なものでした。

「よく考えた?ご両親には相談した?本当にパートナーは見つからないの?子どもにはどうやって説明するつもり?一人で育てていけるの?」

私の口から湧き出る無数の質問に全て丁寧に答えたアンナからは、揺るがない決心が伺えて、頑固な彼女だからご両親の反対すら受け入れることはないのだと確信し、私は全力で応援することにしました。

3回目の人工授精で妊娠したアンナは、幸せいっぱいの妊婦さんになりました。

Photo by benjamin elliott on Unsplash

当初は反対していたアンナのご両親も一人娘のアンナの子どもということもあってか、妊娠に大喜びし、徐々にアンナの決断を受け入れ、その後無事に39歳で出産した後もサポートしていくという姿勢へと変わっていきました。

スウェーデンでシングルマザーは大変か

Photo by Andre Ouellet on Unsplash

全力で応援すると決めた私ですが、やはり日本人ならではの心配がありました。

もし自分が同じ決断を下すことになっても、一人で育てていけるのかという経済的な不安社会の目です。

経済的な面でいうと、スウェーデンは高福祉社会のため、収める税金が日本と比較して高額な分、子どもにかかわる基本的な費用(大学までの教育、医療など)は無料です。

また、子どもには、どんな形の家庭の子どもでも、親の収入に関係なく16歳になるまで児童手当が支給されます。

そして共働きが基本で、個人課税制のスウェーデンでは、それぞれが働いて自分の収入に応じた分の税金を納める必要があり、 結婚している夫婦であっても、また事実婚の夫婦であっても、 シングルマザーやシングルファザーであっても、収める税金には変わりはありません。

確かに二人親の方が家賃や食費などの生活コストを共有できるため経済的には有利ですが、仕事を持っている以上は、一人親だからといって経済的困難に陥ることはまずありません

現に、アンナは、数年前、幼い息子がいながら職場の忙しさと人的なストレスのため身体を壊し一年以上休職していましたが、解雇されることもなく、病休手当をもらうこともでき、親子二人の生活で経済面で困ることはありませんでした。

スウェーデンでは、病気やケガなどで仕事ができなくなっても、 贅沢な暮らしはもちろんできませんが、最低限の生活が保障されています。

このような社会保障や仕組みは、スウェーデンのシングルマザーやファザー、離婚に対するハードルを確実に下げていると感じます。

他方の「社会の目」についても、上記のように社会の制度上で困ることがないという理由もあってか、日本人の私が心配するほど厳しいものではありません。

確かに精子バンクでシングルマザーという状況はスウェーデンでもまだ珍しく、当事者たちは誰にでも大声で話したがることではないかもしれませんが、少なくとも恥ずかしいことはないし、さほど特別なことではないということは、周りの反応を見ていて感じます。

子育てと今後

Photo by Jonathan Borba on Unsplash

アンナの息子はすくすくと成長しており、今年6歳になります。

子ども自身が、父親がいないという事実をどう受け止めるのかが私には気になるところではありますが、アンナは、息子が2歳になったころから定期的に一緒にデンマークを訪れて、息子に伝えています

「ここで、ママはあなたを授かることを選んだのよ。ここは私たち親子にとって素晴らしい奇跡が起こった場所なの。ママは、あなたに会いたくて会いたくて、こういう選択をしたのよ。産まれてきてくれて本当にありがとう。ずっと愛しているよ。」

保育園に通っている彼女の息子が、友達と馴染めているのか、父親がいないことで辛い思いをしていないかと私は気になっていましたが、アンナはこう言います。

「この(スウェーデンの)世の中、親が離婚している子どもが半数なのよ。二人親でも、暴力や不仲な両親のもとで育っている可哀そうな子どももたくさんいる。うちの息子に父親がいないという事実だけで可哀そうと思われることはないわ。何より私は、父親の分以上に誰よりも息子を愛しているから。この子はどこの子より幸せな子どもよ。

この言葉どおり、現在でもアンナの息子の溺愛ぶりといったらすごいので、私は納得するのみです。

私はアンナがシングルマザーであることに不満や弱音を吐いているのを聞いたことがありません。

逆に今でも、精子バンクでシングルマザーになったことは正しい選択で、これ以上の幸せは人生起こり得ないと言っています。

イヤイヤ期には思う存分ママを振り回して甘えて過ごした彼女の息子は、愛情に満たされていることが他人の私にもよく分かります。

ひねくれるどころか、周りの友達や大人にも優しくできる心に余裕のある子どもに成長していることを私も心から嬉しく誇らしく思います。

アンナによると、アンナが利用した精子バンクの規定では、息子がいつかDNA上の父親の存在を知りたくなったら、自ら調べる権利があるといいます。そして場合によってはコンタクトを取ることができるといいます。

Photo by Ashton Bingham on Unsplash

悲しい虐待事件が後を絶たないのは日本社会だけではありませんが、アンナと息子を見てきて、何が子どもにとって幸せなのかを考えさせられます。

そして形にとらわれない視点を持つこと、多様な生き方を受け入れて前向きに応援することで救える命や社会そのものがあるのではないかと思います。

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